■ ヴィスコツィル(Vyskocil)訪問 #4 ■  
そして前回の訪問から1年が経ち、表向きはひたすら変化のないヴィスコツィルですが、cabinotierという言葉を現代に使うとしたらここまでやるべきなんだろうなあ、という仕事振りではあって、完璧さと速さとを同時に期待するのもある意味ないものねだりだなあ、とは思うのでした。
時計の何に価値を見出すかは人それぞれではありますが、ドイツだからって贔屓目に見てるのではなく、背景にある時計師の鬻ぎ方を思うにやはりこの時計の設計から部品加工、装飾技術までの表に見えない手間のかけ方はスゴイです。

というわけでアップデートです。
部品の進捗
こんなものまで作ります
雑談

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visited: 10/16/06
written: 10/20/06

■ 部品の進捗 ■  
もうほとんど仕上げて組み上げる程度の段階までは進んでいます。
例のブリッジと香箱
その他もろもろ

■緩急調整
前回、前々回と大きな変更が加えられた緩急調整ですが、設計から部品の形状についての試行錯誤が進み、ほぼ確定して実際の部品になってきました。
例のゼニス135的な調整装置の下側に収まる部品の形状をご紹介。
微動緩急調整装置の実物
前回の解説と見比べていただくと、何がどうなってるかお分かりいただけると思います。スワンネック状の部品でヒゲの長さを、短い方の部品でヒゲの位置を決める構造です。

■ダイアル側
微妙にダイアル側の写真を公開するのは初めてのような気がしますが、ジュネーヴストライプ加工にして、彼の自宅の住所の緯度・傾度を彫り込んであります。
ダイアル側にはパワーリザーブ表示と例の特殊な時刻設定の機構がくるわけですが、前回では厚みを増すことで剛性や耐久性を改善させていたのに対し、今回はパワーリザーブ関係の歯車の位置を若干ずらして、オシドリやカンヌキのサイズを大きくしています。
ダイアル側
あと、恐らく写真ではよくわからないと思うのですが(暇な方は1.5倍くらいに写真を拡大してナマの洋銀のままの部品を確認してください)、竜頭を元に戻す時に針が飛ぶことがありますが、それを防ぐために後述する歯車の加工精度の他に、日の裏にひとつ部品を加えています。

■コハゼ・コハゼバネ
パワーリザーブの歯車の場所を若干ずらしたもうひとつの理由がこれ。クリック感を高めるのにコハゼとコハゼバネのサイズを従来の設計より大きくしています。
ブリッジの裏
光の関係で見辛いかと思いますがご容赦。

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■ こんなものまで作ります ■  
で、もちろん上にご紹介したようなことでも時間はかかるわけですけど、人によってはそこまでこだわるの?という疑問を抱いてしまうであろうことまでやってしまってます。
怪しげな機械
ソフトウェア
この機械は温度を変化させて一定させつつ、歯車の音を拾えるというもの。各姿勢での精度ももちろん計測できるようになっています。
ソフトウェアの方は音と温度を拾ってきて、温度変化により歯車の咬み方がどう変化するかを音の面から長時間記録するというもので、これで何をやるのかというと、歯車の工作精度を判断するとの由。
温度に関しての調整でいえば、日差は測れても、日差のばらつきだったり、1日なりパワーリザーブの40時間強なりのある特定の時間を抜き出した時の日差のばらつきだったり、非常に調整が難しいけど、そこまで精度にこだわりたいんだ、とのことでした。
そんな調子なので、この機械もソフトウェアもまったくの自作だそうで、最近の時計師はCADは使えて当たり前になりつつありますが、ソフトまで書く人はそうはいないんじゃないでしょうかね。

・・・そこまでひとりでやるの?みたいな話で色々訊いてみたところ、メッキの作業もかなりノウハウが重要そうで、特定の色味を出すのにシュトゥットガルトの専業メーカーに問い合わせたりして、洋銀に金をメッキする方法を確定させるのに数ヶ月を要したようです。
その辺本にしたら?って訊いてみたところ、どのメーカーもそういうノウハウは門外不出だし特定のやり方があるようだから、あまり出しても意味がないねえ、だなんていってました。

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■ 雑談 ■  
今回は向こうも
ほとんどの会話は設計思想に絡む部分だったので上の方にまとめてありますが、それ以外の部分につき簡単にまとめておきます。

- 1年振りですねえ。
- 1年経ったけど何も変わってない、って本当に申し訳ない。
 11月にはようやく最初の5本をデリバリ出来る予定だよ。

- そうこうしてるうちに精度の面で色々追求する会社が出てきましたね。特に素材関係はここのところ話題が豊富ですけど、新素材は考えたりしませんでした?
- シリコンとかでしょ?前にもユリス・ナルダンのフリークの話をしたと思うけど、アンクルが激しく変速するようなものだと特に軽い素材にすることには効果があるよね。
 安定的なパフォーマンスが得られるという確証が今のところないし、自分の設計は設計でどこまで精度を上げられるか、という極限に挑戦しているから、昔ながらの素材を使わないと、精度の比較ができないと思う。

- 脱進機周りでも新しい動きが目立ちますけど、トゥールビヨンとかも含め、考えたりしませんでした?
- アニメ作ってたせいで、設計段階から相談を受けたりする。時計学校からもあの脱進機のアニメはないのかとか問い合わせ増えてるし。
 で、ほとんどの場合、過去500年のいずれかで類似するものは存在していて、まったく新しいものなんてないよ。
 CADの設計と工作精度と新素材でようやく現実的になってきたからやってるって感じだよね。
 トゥールビヨンについては自分の時計の設計思想には合致しないからやるつもりはない。人様のトゥールビヨンなら弄ってるから、できないことはないけど。

- VAに続くムーヴメントとか機能とか考えてます?
- カレンダーの話は前にどこかでしたと思うけど、詳細はまだ明らかにはできない。
 でもVBもVCも考えてるよ。

- ってつまりVA以外の設計を始めてます?
- その前にちゃんとVAをデリバーしないとね。
 今はバックオーダーが60本くらいあって、この辺でもう打ち止めにするつもり。
 その先のは同時並行で進められるようにしておきたい。

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