■ ドーンブリュート訪問記 ■  
今回のドイツ訪問の最大の目的、ドーンブリュートさんの工房への訪問記です。
今回もまたPeterさんにおんぶにだっこって感じでしたが、ドーンブリュートさんも工房への訪問を快く受け入れてくださったばかりでなく、食事とホテルの世話までしてくださいました。
こうやってまとめてみて、色々な方のご協力があって初めてこの訪問が実現したことを改めて実感しました。
諸方面に感謝申し上げる次第です。

以下それぞれ簡単にまとめてみました。
Kalbe/Milde Sachsen Anhalt
ドーンブリュート父子
新モデル・新デザイン
工房と工具
製作のプロセス
ドーンブリュート父子と一問一答
ファースト・モデル

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visited: 02/06/04
written: 02/08/04, 02/12/04

■ Kalbe/Milde Sachsen Anhalt ■  
グラスヒュッテの伝統の継承者を自任するドーンブリュートさんの工房はグラスヒュッテからかなり離れたところにありました。
村の位置はザクセン・アンハルト州の北部、旧東ドイツ地域にあり、かつての東西ドイツの国境に程近いところに位置します。
大きい都市で近いところといえばマグデブルグかハノーヴァーかといったあたりだと思いますが、いずれも100km以上の道程になります。オートバーンなどの大規模交通インフラからも距離があるため、実際にはかなりアクセスが容易ではない地域じゃないか、ということでした。
産業的には空白地帯だそうで、延々と原生林と畑が広がり、通り過ぎる集落の建物も多くは大戦前のものがほとんど、早い話が辺鄙な田舎、という感じでしょうか。
 # ペーター氏がしきりに10km to the end of the worldだなんていうものだから、村上春樹を思い出してみたりして(笑
 # でも本当にそんな雰囲気です。

訪問する際は車が便利ではありますが、車以外に方法がないわけではなくて、Kalbeまで10kmほどのローカル線のBrunauという駅からアクセスする方法もあります。
駅から2〜3kmのところにホテルもあって、安くて小綺麗なホテルなので悪くない選択肢かなと思いました。
 # そうはいっても日本から行く場合はハンブルグかハノーヴァーから車で往復する、というのが一番簡単だと思いますけど。


Kalbeはこんな景色のところにあります
着いたのはもう日が落ちてから

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■ ドーンブリュート父子 ■  
ブランド名からもわかるとおり、ドーンブリュートは父のDieterさんと子のDirkさんのふたりでやっています。
実質的にはDirkさんが実作業をほぼ一人でこなし、Dieterさんは監修している、という感じに見えますね。
ほんの数時間しか、しかも友人のPeterさんを通じての会話しかしてませんが、人柄について感じたことといえば、Dieterさんは寡黙で控え目、仕事一徹で過ごしてきた人、Dirkさんは実直で勤勉、物事にあまり躊躇しない人、というところでしょうか。
Dieterさんはそうはいっても話が昔のことに及ぶと目を輝かせて話したり、「日本人は膝くらいの高さのテーブルで箸を使ってゴハンを食べるんだろう?」というお茶目な質問をしたり(笑
Dirkさんは金曜の遅い時間であったにもかかわらず、こちらのリクエストをすべてかなえてくれる、そんな方でした。

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■ 新モデル・新デザイン ■  
さて、色々と噂の流れているドーンブリュートのkal.99.0の改良と新モデルについてですが、大体以下のような情報を得ました。
 # あくまでドイツ語→英語→日本語の翻訳がうまくいっていた場合、ですけど(笑
改良については、
- 竜頭にロゴを彫る (kal.99.0/99.2共通)
- スモールセコンドの径を大きくする
- 併せてスモールセコンドの針の形状を変更する
- 石を3石増やす:香箱の上下、巻き真の受け
- アンクルまわり:???
といったことをお考えのようで、石とアンクルまわりを除きこうした変更は数週間のうちになされるそうです。
ちなみに既に持っている方でも変更をお願いすればしてくれるとのこと。

新モデルについては
- ビッグデイトは開発中、多分今年中に
- 小型の噂は特に否定していない
といったあたりですが、今は注文がとにかく多くてまずそれを捌かなくちゃ、と笑っておられました。
商売上のこともあろうかと思い、それ以上つっこんで訊くことはしませんでしたけど。

それぞれ写真を撮ってまいりました。
竜頭のデザイン
新しいダイアル
 # 左が白ダイアル、右が黒ダイアルだそうです。
新しい秒針

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■ 工房と工具 ■  
工房は2階建て、1階が作業場で、2階は事務関係と住居なのかなという感じでした。
 # 2階は見てませんけど
広さ的には床面積で1フロア100uくらいってところでしょうか。
多分正確じゃないですけどそんな感じです。

機械・工具の類は本当に古いものばかりでコンピュータの入っているものはノギス1本のみでした。
機械の多くは旧東ドイツから購入したもので、中には私がオールド・グラスヒュッテの修理をお願いしている方(彼もGUBの製造関連)から購入したものもあるとか。
日本製の機械もありました。
歯車を切るところ、サンバースト模様を入れるところ、ストライプ模様を入れるところ、は実演に近いところを見せていただき感激。

以下、主な工具です・・・用語がわからないので適当です(笑
ブリッジの型抜き
ブリッジのバリ取り・磨き・穴あけ
歯車やなんやかやを磨いたり
こちらもそうでしょうか
サンバースト模様をいれます
角穴車1枚作業中でした
歯車を切るのはこちら
作業中の歯車
日本製の拡大鏡でチェック
これでメッキをかけます
ジュネーヴストライプはこれで
ダイアル側のペルラージュはこれで

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■ 製作のプロセス ■  
という具合に工房の中で工具を紹介してもらいながらプレートの型抜きから仕上げまでの流れを説明してもらったのですが、ところどころで実際の部品を見せていただきました。
実物を見ながらだとかなりわかりやすいですね。
 # でも自分でできそうとか思ったかというとそんなことは決してないわけですが(笑

部品の写真です。大体こんな感じで流れていきます。
生ユニタス
型抜きはこんな感じです
型抜きして穴あけて・・・
彫りが入りました
その間地板の方は・・・
模様つけてメッキかけて
パワリザの歯車もOK

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■ ドーンブリュート父子と一問一答 ■  
さて、自分自身だけでなく、今回仕上がった時計を注文した方々や、ドイツ時計バカ一代の常連の皆さんから頂いた質問をしてきました。
質問は工房でしたものあり、その後酒を酌み交わしながらしたものあり、で変なことになっているものもあります。
以下、簡単にまとめたものです。
- なぜユニタス6497/6498を選んだのですか?
- ユニタスを選んだといっても部品はそんなに使ってないしねえ(苦笑
 香箱の構造がよいと思ったのと、スモールセコンドを大きくしようと思ったらユニタスが一番よかったから。

- 現在改良をしているとのことですが?
- うん、色々とね。
 まずはさっき見せたように99.0のスモールセコンドの径を大きくして、針の形状を変えること。
 ムーヴメントはアンクル・・・って正確にはアンクルじゃないんだけど◎△※
   # ここで時計用語をドイツ語→英語→日本語に翻訳することの無理が露呈してしまいました(笑
 石も3つ増やす予定。

- おっ!石を増やすんですか!!具体的にはどこの石ですか?
- 香箱に2つ。香箱の上と下になる。それから竜頭の受けのところ。

- 香箱の上下とは理想的ですね。
- そうだろう?(笑

- ビッグデイトなど新しいモデルについては?
- そうそう、ビッグデイトはやってる。
 他にもアイディアはある。
 でも今はオーダーが多くて、まずそれを仕上げてしまいたいから、いつになるかわからない。

- 小さいのもお考えで?
- うん、でも同じ答えだな(笑
 オーダーをまずさばくことから(笑

- アンティークの青焼き針はあとどのくらいあるんでしょうか?
- 最初の10本だけ。
 とても大切なお客さんに渡ったもので終わりだよ。

- ライヴァルとしてどこか意識してます?
- ラング&ハイネ。

- それ以外で素晴らしいと思うメーカーは?
- ロレックス。
 ムーヴメントも経営もよいから(笑

- AHCIには参加しないんですか?
- 忙しくてそれどころじゃないよ(笑
 ちょっと会合が多すぎるし、出張で出かけていくには時間が勿体ないと思ってる。

- オールド・グラスヒュッテのムーヴではどれが一番よいと思いますか?
- (父子同時に)もちろん60系。
 (ここから父が熱弁)歯車の厚み、部品の加工、設計、どれをとってもグラスヒュッテの手巻きの完成型。
 それからSpezichron。自動巻きの最終型で、自動巻きならこれが完成されていると思う。

- フランス・エボーシュの買収やハインツ・ファイファー氏以降のグラスヒュッテは設計が変わりました?
- え?そんなことないよ?
 10-30も39系も昔の設計を引き継いでるよ。

- チュチマのkal.59クロノグラフについてはどうですか?
- あれは素晴らしくよい時計だ。

- 同時期のハンハルトよりも?
- そう。サイズが大きいしね。
 GUBのkal.64は同じ設計だけど小型化したから「センシティブ」だよ。
 ところで、ポレオットがkal.59の部品と機械をロシアに持って帰って作ってたのは知ってる?
 # 以下、10分ほどロシア製クロノ談義。90年代初頭にポレオットの磨きをやってたのはここで判明。

- 日本市場はどう思います?
- まずは注文たくさんありがとう(笑
 あ、そうそう、ウチのウェブサイト作ったところに連絡するから日本語訳をしてくれない?
 それはともかく(笑、日本を含むアジアは大きい市場として意識している。
 今、40本の注文を抱えているけど、そのうち6割は海外。ドイツ国内からも増えはじめている。
 海外からの注文は多いけど、今のところ代理店を置くつもりはない。
 ところでベトナムは市場としてどう?
   # 以下、アジアの経済状況について談義

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■ ファースト・モデル ■  
実は訪問した時に真っ先に見せてくださったのがこちらのファースト・モデルでした。
ファースト・モデルといっても父Dieterさんご自身でお使いになっているものだけで市販されたものではない、いわばプロトタイプとでも呼ぶべきものです。

ファースト・モデルはGUBのkal.60を改造したもので、緩急調整にスワンネックを付け、2番車〜4番車にシャトン・ビス止めの加工を施してありました。
東西ドイツの統一後、子DirkさんがWOSTEPの学校に通っていた頃、父Dieterさんはポレオットの下請けで裏スケ用のムーヴメントの仕上げをやっていたとのことですが、その頃にこのファーストモデルを作ったということで、グラスヒュッテの伝統を引き継ぎつつ改良する、という意思とアイディアは10年ほど前からあったようですね。
 # 個人的には自分の持っているkal.60のデッドストックで同じものを作ってほしいとか思ってしまいました(笑



ファースト・モデル:ダイアル
ファースト・モデル:ムーヴ

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