■ ベンツィンガー訪問記 ■  
今回、プフォルツハイムに訪れたもうひとつの大きな目的がベンツィンガーさん(Jochen Benzinger)に会うことでした。
って毎回のことながらこんなに忙しい人に個人レベルで会おうってのも無謀な話だなと思いつつ、こちらで時計を製作されたレベルソ好きさんからの協力もあり、お会いできたのは大変ラッキーではありました。

というわけで以下ご紹介してまいります。
工房の環境
機械と作業風景
時計について
一問一答

訪問記トップに戻る
ドイツ時計バカ一代トップに戻る

visited: 10/19/06
written: 10/20/06

■ 工房の環境 ■  
ベンツィンガーさんの工房は住宅街のど真ん中でけっこう意外な感じです。
アクセスはプフォルツハイムからバスまたはS BahnでS BahnだとBroetzigen Mitte駅の目の前になります。
バスだと10〜15分くらいかなというところ。
シャウアーさんとこが黒い森の中を行くのと対照的ではありました。
左手中ほどの奥に工房があります

このページのトップへ

■ 機械と作業風景 ■  
工房の中は想像していたものと、おそらくは100uくらいではないかと思われました。東京だとちょい広めの4LDKぶち抜きで使ってる感じですか。
他の工房より狭いのはベンツィンガーさんがエングレーヴィング専業だからで、それゆえ地板を切ったりするような大きい機械がないからということでしょう。

で、彼の席の背後の壁には現在進行中の時計の青図が一面に貼られており、あ、これってあれだよね、ってな会話をしているだけであっという間に1時間が過ぎてしまうような感じです。
ぱっとみた感じだと、ベンツィンガー節でお馴染みのFabergeやPrinz Wolgang、RGMあたりに加え、Christiaan Van Der Klaauwもあり、IWCもあり、どんな時計であれ、少なくとも見たことあるなあって感じの手彫りギョーシェが纏われている限り、ここの仕事である可能性が高いんじゃないかなあという感じです。
なので、もちろん超熱いネタもぶら下がっていて、来年のバーゼルはこんなのが出るのか〜〜〜って感じにもなりますね。
# というわけでこの辺りは写真撮りませんでした。
テンプ受けのエングレーヴィングをやっているところを撮影させていただきました

機械の方も非常に興味が持たれるところと思いますが、ひたすらギョーシェ彫りの機械が何台も、という感じです。
古いものは150年前のものもあり、最も新しいものでも50年前のものだとか。
やはり産業として歴史があるため、機械のマーケットもそれなりにあって、特に廃業するようなところからは機械がまとまって出ることがあるとか。
また、自前でやるんだというメーカーさんに機械を譲ったりしているようです。
機械機械って書いてますけど、ここでいう機械はギョーシェの線を一本一本彫る昔ながらのギョーシェ彫りの機械で、自動で彫ったりプレスで作ったりするような機械ではもちろんありません。
これは地板にペルラージュする時のものと思われます
これは特定の意匠を彫る場合に使う機械
これもそうですね。ストレートのパターンを刻む時に使うものだそうです。約150年前のもの。
パターン用のアタッチメント
ギョーシェ用でFaberge用などに使っている最も古い機械だそうです。約150年前のもの。

このページのトップへ

■ 時計について ■  
さて、個人がお願いする場合を念頭に聞いてきました。

■時計の調整と金属加工は外部
もちろん彼は時計師ではないので、個人向けにやる場合は契約している時計師2人に組み上げたり調整してもらっているそうです。
ケースや針も外部だそうで、ケースはドイツの小規模のところはみんな使っているFricker、針、ダイアルも外部だとか。
ダイアルは彫りでないところはいわゆるタンポ印刷なので、元の版を起こすことになると値段が上がる、とのこと。
一方、金属加工についても、スケルトン化は自前でやるけど、メッキの類はこれも同じプフォルツハイムの金属加工のところに作業そのものはお願いしているとのことでした。
スケルトンやエングレーヴィングの加工については、ブリッジのような厚みのあるものならどうにかなるけど、丸穴や角穴はETAなどの汎用キャリバーでないと冒険はできない、とのことです。

■納期
個人向けの場合は、週末に作業しているのでどうしても時間がかかってしまうとか。でも通常なら余程ややこしいことを頼まない限り3ヶ月程度で出来るとのこと。

■そのうちペイントにも対応?
子供が描いた絵だとか写真だとかをエングレーヴしてほしい、なんてリクエストもけっこうあるようで、これは相当苦労されているようです。
もちろん彼としてはギョーシェと装飾的なエングレーヴィングが本職なので、そちらの方で力を発揮したいという思いが当然強いわけです。
そんなこともあって、そういう絵や写真については画家の力を借りる方向で考えてるそうで、テスト中のものも転がってました
こういうのは比較的良く手掛けてますね
ペイントする画家とベンツィンガーさんのギョーシェの組み合わせまで持って行きたいとか

■ドイツ時計バカ一代スペシャル
せっかくなので、またドイツ時計バカ一代スペシャルをお願いしてきました。
今回は手持ちの中で、機械が良くてかつさほどレアでもないもので、機械は生きているけど外装がボロボロなのが相応しかろう、ということで、Bifora kal.120というクロノメーターのものを再生してもらうことにしました。
# Bifora 120はドイツ時計陳列棚でも紹介してます。

このページのトップへ

■ 一問一答 ■  
毎度お馴染みの一問一答なコーナーです。
ちょっと簡単めですが。

- けっこう色々なところでベンツィンガーさんのものと思しき仕事を拝見しますが、今はどのようなところがお客さんですか?
- 良く知られているところではFaberge、Martin Braun、RGMの一部。
 他にも飾ってあるように、Prinz Wolfgang、vdKもそうだし、Glashuette OriginalのAlfred Helwig 2 トゥールビヨンもそう。

- これだけのお客さん抱えると、年間どのくらいの数になるんですか?
- もちろん複雑なものが入ってくるかどうかによるけど、各メーカーさんからは50とか100とかって単位で入ってくるので、けっこうな数になるよ。
 だからどうしても個人のお客さんには待って頂くことになってしまって、本当に申し訳ないと思っている。

- (壁に貼られている絵や写真のモチーフの仕事を見て)こういうのはどこまで可能ですか?
- 色々なお客さんがあれもこれも、ってリクエストを出すけれど、ちょっと待って、僕はギョーシェとエングレーヴィング専門だから、これとこれは出来るけど、って説明をまず聞いてもらっている。
 でも、変わったところだと、ここにあるように車の絵だったり、龍のエングレーヴィングなんかもやってる。

- 龍ってやっぱり中国系のお客さんです?
- いや面白いことに必ずしもそうじゃなくって、ヨーロッパのお客さんが「東洋的なモチーフのものがほしい」ってことで売れるみたい。
 中国のお客さんだと子供が生まれた干支だからってことで戌を彫ったり、酉を彫ったりしたこともあるよ。

- ここまでできて、まだ何か目指しているものってあります?
- もちろん。究極的にはブレゲが生きていた頃に作られたブレゲの懐中のダイアルのような水準まで持っていきたいと思っている。

このページのトップへ