■ ドイツ時計研究研究 〜 ムーヴメント編(懐中) ■  
こちらはドイツ時計研究のうち、懐中のムーヴメントに関するあれやこれやを雑駁に書き連ねたものです。

メーカー編(グラスヒュッテ)
メーカー編(シュヴァルツヴァルト)
メーカー編(AlpinaとDugena)
ムーヴメント編(腕時計)
ニュルンベルグの卵
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■ケースの形状
■Louis XV針とLouis XVI針の違い
■グリューン(グリュエン)とアスマン
■スイスのエボーシュ?
■グラスヒュッテの脱進機
■システム・グラスヒュッテについて
■ランゲ&ゾーネのグレード

■ ケースの形状 ■
よく忘れるので個人用の備忘録として書き留めておきます。

ランゲの使っていたケースの名称とその特徴。
Louis XV:ヒンジ、弓環ともごつい
Louis XVI:Louis XVよりヒンジが小さい
Lucia:滑らかな形状、最も一般的
Cavalier a Goutte:Luciaに似ているがもう少し軽妙な感じ?
Jurgens:丸みが強い弓環、蓋のエッジとケース本体に段差を付け厚みを強調
Imperial:薄型用?
Directoire:アメリカの小型のものによく見かける装飾の強いもの

形状に関して。
Offen=オープンケース≒Lepine(巻芯と秒針が直線上)
Sprungdeckel=ハンターケース≒Savonette(巻芯と秒針が直角)

04/15/07
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■ Louis XV針とLouis XVI針の違い ■
ムーヴメントの話ではありませんが、懐中の様式ということで。
針の形状でルイ15世針とルイ16世針というのがありますが、よく混同されているように思います。
# というか、自分自身、混乱しているわけですけど
これらは実は同じではなくて、ルイ16世針ではルイ15世針に比べ針の中心に近いところの装飾が1つ省かれているのが最も大きな差で、この差によってルイ16世針の方が若干シンプルになっています。


ルイ15世針の例


ルイ16世針の例

04/15/07
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■ グリューン(グリュエン)とアスマン ■
なぜか日本で大人気のアスマン製グリューン(グリュエン)、やはりここで取り上げずにはおれますまい。

グリューン(グリュエン)とアスマンの関係をさらっとおさらいすると、
 - グリューン(グリュエン)→アスマン:次男のフレッドが生産工程の近代化を指導、輪列を設計(1893〜1897)
 - アスマン→グリューン(グリュエン):ムーヴメントを供給(1894〜数年間)
という感じです。
なぜフレッドがドイツに行き、アスマンの機械の供給を取り付けたかには諸説ありますが、インフレによる米国内の部品の確保が困難になったとか、アスマンの品質がよかったとかありますが、やはりグリューン(グリュエン)自身がドイツ人だから、というのが大きい気はします。
なにせ1876〜1894年のColumubus時代にはデューアシュタイン(ウニオン)などにも機械を供給してますし。
 # もっともグリューン(グリュエン)自身はドイツでの時計修行はフランクフルト近辺に集中していて、グラスヒュッテとは縁がなかったようですが。

さて、アスマン製グリューン(グリュエン)はその分厚いブリッジやゴールドトレインもさることながら、グラスヒュッテ製では唯一の勾玉レギュレーターを採用していること、ムスターシュアンクルを採用していることで知られています。
 # 勾玉よりもカタツムリ型カムという名称の方が一般的なんでしょうかね。
で、この勾玉レギュレーターに極初期型、初期型、後期型があるという話。
たかだか3000くらいしか作られていないっていう話なのに大仰な話です。

で、これが初期型と後期型なんですが、初期型は勾玉が乗っかってるギアを微調整するためのギアが付いています。後期型はそれに対し勾玉を直接弄る形になっていますね。
ちなみに超初期型はSchliesserさんのページに写真があります。どう調整するのか謎すぎますが。

そんなワケでアスマン・グリューン(グリュエン)を細かく分けると、
 - 石数が18石(アンクル・ガンギのみ金)と21石(金の輪列にアンクル受けが金の蓋石)
 - ダイアルの銘がD. Gruen & SonとD. Gruen & Sons
 - 微動緩急調整装置が極初期型、初期型、後期型
てな具合に分けられる、という話でした。だから何、という感じがしないでもないですが、この細かさにこだわるのが求道者というところでしょうか(笑

で、グリューン(グリュエン)向けに作っていたはずのアスマン、グリューン(グリュエン)用のをグラスヒュッテ仕上げ(ギルト仕上げなブリッジ、サンバーストな角穴・丸穴、スワンネックなレギュレーター等々)でアスマン銘で出していたりしました。
おいおい、グラスヒュッテの零細部品メーカーに作らせているランゲ&ゾーネ他と共用の部品は?などと思ってしまいますな。
微笑ましいのが勾玉ギアが乗っているべきところがすっかーっと抜けているところ。並べると一目瞭然だったりして(笑

さらにムスターシュアンクルを用いているところもグリューン(グリュエン)向けと同じだったりしますが、こちらは形状が異なっていて、試行錯誤の後が見られます。

うーん。これぞ鬼っ子というか、コレクター心をくすぐられまくりでした。
ま、並べてみると壮観ではあります。

# Dr. Crottの72回(2006年5月)にグリューン(グリュエン)の初期型と同じタイプ勾玉レギュレーターを載せたアスマンが出品されていました。

 # 写真をクリックすると大きいのが出てきます。

08/24/04
06/02/06 加筆
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■ スイスのエボーシュ? ■
グラスヒュッテの懐中にまつわる都市伝説(って変ですが)として、いわくオーディマのエボーシュがどうの、IWCのエボーシュがどうの、という話が流れているようですが、この点は最も事情がつかみにくい部分で、そうした話が流れるのもいたしかたないことではあります。
少なくとも、この件に関しては慎重な資料の検討が必要であろうかと思いますが、とりあえず自分が得た情報の範囲では、
 - 基本的には当時のドイツ政府(第2帝国)ならびにザクセン州政府の産業政策から、すべての部品をグラスヒュッテで生産している
 - ただし技術的に高度なコンプリケーションの一部(リピーターとクロノ)でオーディマとルクルトのエボーシュを使っているものがある
ということのようです。

05/16/04
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■ グラスヒュッテの脱進機 ■
グラスヒュッテの懐中に用いられる脱進機は独特のもので、イングリッシュ・レバーをベースに(だと思います)、アドルフ・ランゲが1850年代に完成させたものです。
アンクルの形状が非常に独特で、ツメ石は中に上下に挟まれた形で埋め込まれているため、表にはハッキリと見えない場合が多いように思います。

それ以外では、AssmannはGruenとの関係からムスターシュ・アンクルをしばしば用いていたようです。Grossmannでも一部ムスターシュ・アンクルがあるようです。
また、1920年代の中頃になりますが、グラスヒュッテ時計学校の先生だったHugo Müllerが新たに開発し、DPUGに採用されたようです。
ミューラー・レバーの写真その1
ミューラー・レバーの写真その1

Vyskocil氏のサイトに非常にわかりやすいアニメーションがあるのでこちらをご覧下さい。
グラスヒュッテ・レバー
ミューラー・レバー

05/16/04
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■ システム・グラスヒュッテについて ■
オークションなどでよくシステム・グラスヒュッテという名を見かけますが、システム・グラスヒュッテとはメーカー名ではありません。
システム・グラスヒュッテはSysteme Glashütteと表記しますが、このようにSystemeという用語が頻繁に見られるものとしてSysteme Roskopfがあげられるかと思います。
・・・ということでもうおわかりかと思いますが、ピンレバー脱進機のものをドイツではSysteme Roskopf、すなわちロスコフ式と総称しているワケでして、したがってシステム・グラスヒュッテとはグラスヒュッテ式、つまりグラスヒュッテ製ではないグラスヒュッテ様式の時計の総称ということになります。

で、まずどういうメーカーがグラスヒュッテ式に含まれるのか、ですが、広義の意味で捉えると
Durrstein & Company Dresden
Uhrenfabrik Unionのうち、鐘と5つの星の刻印のあるもの(鐘ウニオン)
Alpina Union Horlogere、Alpina Prazisions UhrenfabrikまたはAlpina Glashutte
Uhrenfabrikation Otto Estler Glashutte Sa
Nomos Uhr Gesellschaft Guido Muller & Co Glashutte i/S
J. Bolland & Son St Louis
Adolf Schneiderのうち、Chronoscop銘のもの
A. Lange & Sohneのうち、土星っぽい刻印のあるもの(土星ランゲ)
Saxonia
Teutonia
無銘もしくはSysteme Glashutte銘
等々が知られています。
このうち、DurrsteinについてはFelsenburg製、Monopol製、Columbus製(D+C)が知られています。これはグラスヒュッテ式というよりDurrstein社が輸入販売していただけ、という感じもなくはないです。もっとも輸入するにあたり3/4プレート様式を特注していたフシもありますね。

機械上の特色、というかどう見分けをつけるかは、古いものであればアンクルの形状がグラスヒュッテレバーではないことと、ブリッジやテンプ受けの形状が異なること(特にガンギ受け)で大体つかめます。

05/16/04
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■ ランゲ&ゾーネのグレード ■  
ランゲ&ゾーネの懐中には様々なグレードがあり、けっこう仕上げ、素材、質感に開きがあります。ある程度
ムーヴメントやケースに刻まれる銘(ブランド)によりグレードが異なり、その銘を以ってグレードを指します。
その銘もしくはグレードの名称は、一般に(便宜的に)略称を用いていて、
■A. Lange & Sohne銘:ALS
■Deutsche Uhrenfabrikation:DUF
■Original Lange Internationales Werk:OLIW
となっています。
さらにALSグレードは後述する仕様の差により、1Aなどのグレードに分かれています。
一応、簡単な順列は
ALS Ankerchronometer>ALS 1A(>ALS 1B)>ALS 1C≧DUF>OLIW
くらいなイメージでしょうか。

■ALS (A. Lange & Sohne Dresden/A. Lange & Sohne Glashutte i.Sa.など)
ランゲ&ゾーネの王道中の王道というか、ランゲの最高品質のもので、1868年以降にこの品質規格が設定されたようです。
このクオリティを満たす条件としては、アンクル、ガンギ、香箱が純金であること、スワンネック、ブレゲヒゲを使用していること、など。
調整は3つの違う温度下で5姿勢でなされていたとのこと。
さらにALSの規格のもとに1A、1B、1Cの3つのランクがあり、
クラスケースエンドストーン他の石歯車
1A18金、銀、プラチナダイヤモンドルビー、ゴールドシャトン青ネジ止め
1B14金、18金、銀、プラチナルビールビー、ゴールドシャトン
1C14金、銀ルビールビー、シャトンなし真鍮

となっています。
ただし、1Bについては正式なランクではないようで、非常に数が少ないそうです。
 # UnionやAssmannには1Bに相当するものが多数見られます。
なお、ダイアル等の表記ですが、

A. Lange & Söhne
Glashütte bei Dresden

あるいは

A. Lange & Söhne
Glashütte i.S.

などと記されています。

■ALS Ankerchronometer
コンプリケーションはさておき、3針のALSの中で天文台や船舶用に製作された特殊な一点ものを除き、最高峰といわれるのがAnkerchronometerというものです。
これは通常のものよりも径が大きく、特にテンワのサイズが通常14mmなのに対し、19mm以上となっており、精度の向上を目指したものです。
他の仕様としてはALS 1Aと同様となっています。

■DUF (Deutsche Uhren-Fabrikation)
Unionの創始者、Johannes Durrensteinの発案によって、1879年に規格化され、ブランドとして成立したランゲのディフュージョンラインです。
石の数は稀に見られるコンプリケーションを除き15石、一般的にケースに14金もしくは銀を用いているようです。
調整は2つの温度下で2姿勢でなされていようです。
表記についてはダイアルとムーヴメントの両方に

DEUTSCHE UHRENFABRIKATION
GLASHÜTTE-SA.
A.LANGE & SÖHNE
と表記されています。

■OLIW (Original Lange Internationales Werk)
WWI後のインフレの中ではDUFよりさらに普及価格レンジを準備せざるを得なかったようで、そのために1922年に用意された規格がOLIWです。
機械についてはテンプ、アンクル、ガンギの簡略化が行われています。
表記についてはダイアルとムーヴメントの両方に

Deutsche Uhrenfabrikation
Glashütte i.Sa.
Lange-Uhr
と表記されています。Lange-Uhrと書いてあるのがポイントですね。
Lange-Uhrと表記されているものには同時期のスイス・エボーシュなランゲの腕時計もありますんでご注意。

02/15/03
05/16/04 加筆
08/29/04 加筆
06/02/06 加筆
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